なんでもない散髪屋さん


赤と青がぐるぐる回る散髪屋さん。

宿河原の「髪切処」は、私と同年代?と思われるおじさんがひとりでやってます。

いつも「短くしてください」とだけ伝えて、切ってもらっている間ほとんど会話はなく、テレビを眺めます。

会話を求めないのがラクです。

最近、中一の息子もここで切るようになりました。

先日、予約制でないので、待たないように、と、営業時間開始の朝9時に行ったら、扉が閉まっていて誰もいません。

すぐそばの小島米店のおじさんに、「あそこ、いつ来るの?」と聞いたら、「9時に来たことはないね~、9時半にはいると思うよ。」とのこと。


そうなんや。

息子といったんうちに帰り、9時45分くらいにもう一度行きました。

先客がひと組いました。

(たぶん)障害のある若者と、付き添いのお母さん。

話すと、お母さんも以前、昼ごろに来たら閉まっていて、ライフ(近所のスーパー)で待つかどうか迷い、結局帰ってしまったことがあるそうな。

営業時間中もいなくなるんや…

そんな話が、おじさんの耳に入っても全然大丈夫、なのがすごい。おじさんは淡々と若者の髪を切っています。

お母さんと「情報の擦り合わせ」で盛り上がっているところへ、お爺さんがやってきました。

お母さん「うちは(切るのは)あの子だけです。」

私「うちも子どもだけだから、待ってるのは2人だけです。」


3人がけのベンチで、お爺さんもほくほくと会話に加わりました。

お爺さんはすぐ近くの稲田小学校出身で、2年生のときに太平洋戦争が始まり、6年生のときに終戦を迎えたそうです。稲小は軍人の宿泊所(訓練所?)になり、都内から登戸に疎開しにきた子どもたちも結構いたそうな。

セビア色の映像が浮かんできました。


そうすると、若者が髪を切り終え、私とお爺さんに屈託なく笑いかけてきました。私は少し戸惑いつつ「こんにちは」と笑いかけ、お爺さんはニコ~~と返しました。


ああ、すごい。
(このふたりほどの通じあう力を私は持たないと、一瞬で思い知らされる。)

あとでお爺さんが「あの子はなんか(障害が)あるんかな」と聞くので、私は「そうですね」と(たぶん)朗らかに返し、それからまた、戦中の話と、このへんは昔はぜんぶ梨畑だったこととか、宿河原に昔から住んでいる人は見ればわかる、というような話に聞き入りました。

このなんでもない散髪屋さんは、すごい。

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